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ジョージ学院長 元気の出るブログ
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自分のアイデンティティを見つける
ビリーはだれもパンチすることができない。父親が「パンチ!パンチ!」と大声で叫んでも、彼にはその指図が理解できない。実際のところ、きゃしゃな身体の少年は、異常とも言える大きなヘッドプロテクターとボクシンググローブでカモフラージュされていると言ってもいいほどだ。
ビリーは敵にアッパーカットをくらって倒されるまで何度もぶざまな恰好でロープで反動をつけては相手に向かう。しかし、気づくとリングの上に倒れている。父親は恥じ入り、トレーナーは絶望している。本物の男が夢中になるこのスポーツをビリーはなぜ身につけることができないのだろう。ビリーはただボクサーには生まれついていないのだ。
北イングランドのダーラムの通りでは、炭鉱の閉鎖に反対する抗夫たちがストライキをしている。エリオットの父親もその中のひとりだ。わずかばかりの生活費を守るために彼は警官と闘おうとしている。彼は人生の過酷な現実を理解している。もはや政治には頼れないとわかっている。彼の望みはこれまでことごとく打ち砕かれてきた。息子たちには何としてもこの苦しみを味わわせたくない。末っ子のビリーさえ自分自身を守る手立てを早くから身につけておく必要がある。だからボクシングジムに通わなければならない。すべて理にかなっている。子どもの将来のための投資と彼は信じているのだ。
しかし、ビリーはそのようには感じていない。ジムはふたつに区切られていて、その半分で少年たちはボクシングをし、あとの半分では少女たちがバレエの練習をしていた。ビリーはこのバレエのようなスポーツにすっかり魅了されている。純白の衣装のチュチュに身を包まれた少女たちはまるで宙を舞うようで、その優雅なステップや繊細なジャンプは音楽にピッタリ合っている。
繊細な感じの女性インストラクターはビリーのバレエに対する憧れに気づき、ビリーを応援して密かに彼にプライベートのダンスレッスンまでしてあげた。しかし、そのことを知った父親は頭にきて怒った。「ダンスなんて女がやるものだ!」
しかし、ビリーはこんなことでは引き下がらなかった。自分の夢を実現させるために、口げんかや周りの冷やかしなどどんな障害にも彼はくじけなかった。父はついに根負けした。ビリーはダンサーになり、ロイヤルバレエスクールのスターになった。ビリーはバレエダンサーに生まれついていたのだ。

この感動的なストーリーは、映画『ビリー・エリオット リトルダンサー』からだ。舞台は1984年にさかのぼる。当時、男性と女性の間には大きな壁が立ちはだかっていた。今日ではこの壁は昔と比べるとずいぶん小さくなっているが、「自分のアイデンティティを見つける」というこの映画のテーマは今も変わらない。人は自分の願望をかなえるために、そして固定観念を破るために必死で自分自身を発見しようとしている。とどのつまり、私たちはみんな自らの内に幸福の種を持っている。ビリーにとってそれはダンスだった。しかし、彼の家族はそれを理解できなかった。彼らは驚かされ、さらに彼を責めたてすらした。さらにこの子はどこかおかしいのではないかとも思った。
ビリーのどこがおかしかったのか言おう。なにもおかしくなんかなかった。彼はまったく正常だった。彼は自分の内なる声に従い、その結果強くなったのだ。
ウォルフガン・ソンネンブルク
(訳 舟田譲二)
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