学院長元気の出るブログ

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アンコー、ハスペロー

2016.07.11日

タイトルの「アンコー、ハスペロー」を見てすぐにピンと来る人は英語の玄人です。
以前、「意志あらば道通ず」にも書きましたが、叔母がアメリカ人と結婚していて、私は幼少の頃から毎年夏休みはその叔母の家でずっと過ごし、そこで叔父や叔母の話す英語に触れる機会がありました。
下の写真は、両親、叔父・叔母たちと一緒に箱根小涌園ホテルに行った時のもので、私は小学3年生でした。
叔父と叔母に子どもがいなかったこともありますが、実の子どものように可愛がってもらいました。


uncle.JPG


幼稚園の頃から英語が好きだった私は、叔父と叔母から英語を学ぶのがいつも楽しみでした。
身の回りにあるものや気になった言葉はほとんど何でも、「英語で何て言うの?」と尋ねて教えてもらいました。
上のふたつはその時、教わったものです。おわかりになりましたか?
そう、「アンコー」は叔父を意味する uncle です。叔父のことをアンコーと呼んでいました。
中学生になって文字から英語を学び始めると、これはほとんどみんな「アンクル」として覚えます。実際のところ、学校の先生もそのように発音して教えています。
しかし、耳に聞こえる音は「アンコー」なのです。
これは発音記号で記すと【ʌŋkl】ですが、絶対に「アンクル」とは発音されず、最後の【kl】の発音は耳には「コー」と聞こえるのです。実際のところ、アメリカ人で幼児など、まだ正確な発音ができない子どもなどは「アンコー」と言っています。
【kl】を始め、【pl】【dl】【tl】【sl】など子音に続く【l】を音声学では dark l (暗いl)と呼び、実際アメリカ人でもこの l を舌先を上の歯茎にしっかり当てずに発音する人もたくさんいます。つまり、発音しにくく、また聞き取りにくいから dark l なのです。
(これに対して、 clean, plan, lead などその後に母音が続く l は舌の先を歯茎にしっかりとつけてはっきり発音しやすいので、clear l とか light l と言います)
ですから、日本でも小学生の時に耳から英語を学ぶと、pencil を「ペンソー」、circle を「サーコー」などと発音するのです。


それでは、冒頭の「ハスペロー」は何でしょう。
答えは hospital です。日本では、病院は「ホスピタル」と思い込んで、そのように発音しているのですが、これも実際に聞くと「ハスペトー」のように聞こえます。
これを、私の叔母が叔父の発音を何度も聞いて、私に教えてくれたのが「ハスペロー」だったのです。でも、私が「ハスペロー」のように発音したところ、叔父もOKを出してくれたから面白いものです。
子ども心ながら、叔母の話す英語は発音が下手だなといつも思っていました。


中学生になってわかったことですが、このアメリカ人の叔父が話す英語の文法はめちゃくちゃでした。
“She don’t know nothing.” (「彼女は何も知らない」。正確には“She doesn’t know anything.”)
“You ain't seen nothing yet.” (「お前はまだ何も見ちゃいないよ」。正確には“You haven’t seen anything yet.”)
といった調子です。
私の父も戦後、駐留軍GHQで働いていましたから、やはり耳から学び、叔父と同じように “She don’t know nothing.” を連発していました。
私自身はこれには抵抗があって、一度もそのようには言えませんでしたし、今でもアメリカ人を始め、外国の方とメールのやり取りやチャットをしていても文法的な英文を書きます。


でも大切なことは、文法的に正しい英語を書けるか、話せるかということではなく、たとえ間違ってもいいからもっと話す、ということだと思います。
人はだれでも間違って初めて学ぶものだからです。
事実、現在外国人とチャットをしていて、文法的な間違いなどみんな全然恐れていません。
昔、アメリカに留学していた頃、タイやベトナム、フィリピン、ホンコンなどのアジアの国々から来ていた留学生は、発音も文法もめちゃくちゃだったにもかかわらず、そんなことには無頓着でどんどん積極的に話していました。一方、日本人はそのほとんどが無口でした。間違いを犯したら恥ずかしいという思いがきっとあったのでしょう。そしてこれは、おそらく今でもあまり変わっていないのではないでしょうか。
国民性ということもあるのでしょうが、日本人にはもっと積極的になってほしいものです。
このような積極姿勢は、とくに語学や文化を学ぶ時には絶対不可欠です。
さらに言えば、「間違いから学ぶ」ことは学問の王道です。


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