学院長元気の出るブログ

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たらちね考

2016.04.09日

一昨日の夜、中3生のTさんに国語を教えていました。
国語が好きで得意と言うTさん、さすがにとてもよくできます。読解問題などはほとんどいつも全問正解。
「難解」な文章は、傍線を引きながら、それこそ「何回」も読んで正解に導きます。
苦手意識を持っている文法問題も少し教えるとすぐ飲み込み、どんどんできるようになります。


一昨日は、やはりTさんが苦手としている詩と俳句・短歌でした。
苦手と言っているのに、自分で一生懸命考えて、やはりほとんど全部できています。間違えたところや、よくわからなかったところを中心に教えるのですが、全部納得してくれます。
短歌のところで枕詞(まくらことば)の「たらちね」が出てきましたが、もちろん彼女にとって初顔合わせです。


足乳根の母に連れられ川越えし
田越えしこともありにけむもの

斎藤茂吉


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(斎藤茂吉生誕地 山形県上山市月岡公園内歌碑)


意味がわからないようなので、私が自分の昔の記憶で教えようとしたのですが、その前に念のためと、ちょっとiPhoneでネット検索すると意外や意外。私が習ったこととまったく違うことが書かれています。


私が教わったのは「垂乳根」、すなわち乳が垂れた老いた母のイメージだったのですが、別解釈に「足乳根」で、「満ち足りた乳」、すなわち授乳中の豊かな乳というのがありました。
さらに、もともとは「たらちね」、漢字を当てたのは後世で、意味はないとするもの。
そして、元来の意味は未詳というものも。


Tさんには一応これらみんなの解釈を教えましたが、後でいろいろ思索しました。
ネット記事の中に「垂乳根の母とは、乳が垂れた母親のことを言うのですか? なんて下品で卑わいなのでしょうか」というのがあり、思わず笑ってしまいました。
きっと、ボ…、ペ…のようなイメージを持った、若い女性の方が書かれたのでしょう。


私が子どもの頃は、近所のおばさんだけでなく、若いお母さんが電車やバスの中など公衆の面前で恥ずかしさなど微塵もなく、胸を出して赤ん坊に乳を飲ませている情景などざらでした。
これを卑わいなんて誰も思いませんでした。
ましてや「たらちね」という言葉が生まれたのは、今から約1200年も前の万葉集の時代ですよ。


私が思うに、
「垂乳根の 母が釣りたる 青蚊帳を すがしといねつ たるみたれども」
に見られるように、「たらちね」はもとは「乳が垂れた老母」の意味だった。
しかし、新たに「足乳根」という漢字がつけられて、「ふっくらした乳」の意味になり、やがて両者の意味が薄れていって、意味のない単なる枕詞と言われるようになったので、その歌によって捉え方は異なるのではないか、と。
だからどの解釈も正解でしょう。


そう言えば、私自身も子どもの頃の母のイメージはふくよかな乳、そして晩年は垂れた乳でした。
そのいずれも、あたたかさを感じこそすれ、卑わいさなどあろうはずもない。
なにせ、「たらちね」は「母」にかかる枕詞で、「女」にかかるものではないのだから。


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